浴室が怖いという話
どうでもいい話なのですが私は浴室が怖いです。
被害妄想や幻聴がよく現れるからです。
主治医の先生曰く、そういう患者さんは多いとのことでした。
狭い浴室ですので、シャワーを浴びていると身体の右側と背後は壁に囲まれています。
左手には、曇りガラスというのでしょうか? 浴室やお勝手口によくあるような、目隠し加工をされた不透明な扉があります。
目の前には浴槽があり、浴槽側の天井に換気扇のフィルタが見えます。
そのような狭い浴室でシャワーを浴びていると、右側の壁が「バンっ」と叩かれます。
この時点で、「あ、今日は幻聴が出るのか」と気づきます。
私は怖がりなので、この最初の段階でかなり嫌になります。
次に換気扇のフィルタから、けたたましい笑い声が聞こえてきます。段々近づいてきます。
男性の声も女性の声もします。
車が走る音もゴオゴオ聞こえてきて、何の記憶なのか謎ですがサイレンが聞こえてきます。
私は気づいていないふりをしながら、一刻もはやく浴室から出たくて髪を洗います。
全身鳥肌が立ち、目眩がして手元が震えてきます。
目を瞑るとそのすきに私の座っている椅子を誰かがガタガタ揺すって地震がきたかと錯覚させます。
ですので目を瞑ることができるのはほんの一瞬です。
左手にある不透明な扉の向こうから、大勢の人たちの話し声が聞こえてきます。
誰かが扉の近くに寄り、ザラザラした景色の中に人の形をした影が見えます。
背後に誰かおり、息を吹きかけられたり背中がぶつかったりします。
しょうもない幻聴、幻視であると自分に言い聞かせますが、鳥肌と芯からの恐怖感は消えません。
既に扉の向こうの平穏な世界と切り離されていて、私はこの浴室を生きて出られないと思うと、暗い穴にずっと落ちていくような髪の毛が逆立つような浮遊感を覚えます。
ぞっとしながらシャワーを終えて浴室から出た時には、「生還した……」という気持ちになります。
衣服を身につけていない無防備さが、不安を生じさせるのかもしれません。
また不透明な扉で隔てられていて、一定の時間以上外に出られないというところも不安なのかもしれません。
シャワーの音や反響音、また目を瞑って視覚が阻害されることで、周囲の状況を把握しづらくなるからかもしれません。
何れにしても、こうした浴室での幻聴があるとお風呂がかなり嫌になるので困ります。
ちなみに扉を少し開けておくと、幻聴は軽減されます。
ただし、誰かがこの生命線ともいえる扉を「バンっ」と閉めてくる時もありますので気をつけましょう。
その場合は幻聴に説得力を与えてしまい、閉められた瞬間さらに恐怖感が増すことになります。
石鹸を置いていても弾かれてしまいますので、ある程度長さのあるものを挟んでおくと安心だと思います。
もっと安心できる対策を知りたいです。
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